インタビュー

『障がい者にエールを』 第4回 対談者 北野 美樹さん

概要

シリーズ『障がい者にエールを』。狩谷亮裕さんのインタビュー企画。前向きに
取り組む仲間の活動を紹介することで、一人でも多くの人たちを勇気づけられ
たらとの願いから始まった。4回目の今回は和歌山県御坊市にある、パソコンスクールTAKumiの北野美樹さんとの対談を紹介する。

インタビュー記事をアップし、多くの仲間に勇気を届けたい!と意気込んでいたのですが、コロナ禍で思うようにいかず、苦々しい思いをしていました。その間、7月中旬から2ヶ月にわたり障がい者を対象としたパソコン教室に参加させていただくことになりました。
その中で感動的なことがあったのでぜひ皆さまにも知っていただけたらという思いもあり、久しぶりの投稿となりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

様々な助けを借りながらなんとか乗り切った2か月間

このパソコン教室は、障がい者雇用の促進等を目的に実施する、令和2年度障害者委託訓練として和歌山県から委託された、御坊市の株式会社パソコンスクールTAKumi(北野卓志代表)がハローワークのあっせんを受けた障がい者を対象に一日6時間、2ヶ月合計176時間にわたり基礎の基礎から指導してくれました。今回は男女計6人が集まりました。

知人の勧めで受講することになったのですが、私はなにぶん車いすのため、会場がどんなところか?事前の下見は欠かせません。
今回の訓練の場所は、JR御坊駅のすぐ近くにある輿土ビル内。エレベーターを使って教室のある2階へ。一番気がかりだったトイレをチェックすると、障がい者用のものがなく、手すりもなかったため、私は、「授業の内容もそうだが、トイレで苦戦するんじゃないかな…」と思い毎日を過ごしていました。

けれども、なんとか壁やトイレのドア、タンクなど。持てるところはすべて駆使して。そして何度も繰り返し使うことによって、体がTAKumiさんのトイレに慣れていったこともあってか、動きもスムーズになり、私の苦労は杞憂に終わりました。

忘れられない『9月1日』。

そんなこんなで訓練も終盤のある日。この日は事前の予定にはなかった、急きょ授業が入った日でした。昼から用事もあったので教室を出る前にトイレを借りておこうと思い、トイレを済まして手を洗っていると、今回大変お世話になった北野美樹さんが「このトイレに手すりをつけようと思うんだけど、その前に当事者である狩谷さんの意見も聞いておこうと思って」と声をかけてくれました。私はそのとき思いつく限りのことを私たちの目線からお伝えしました。

「日程ももう終わりが近いから、狩谷さんがいる間には間に合わないかもしれない。ごめんなさい。」と北野さん。とんでもない。私はその時、涙が出そうなほどの感動を覚えました。

というのも、この訓練が始まる前。何度か下見に行った際に、このトイレだとギリギリいけないことはないが、かなり苦労をすると思う。時間がかかると思うということを家族やヘルパーさんともどもお伝えしました。話し合いの結果、間口が男性用トイレと比べて少し広い女性用のトイレを私専用に貸していただけることに。女性の方には恐縮でしたが、私が使う時は別の階のトイレを利用してもらっていました。みなさん心優しいご理解とご配慮、ありがとうございました。

訓練が開校するまでの間に、こんなやりとりの中、できる限りの配慮はしていただいたので、あまり無理は言えないなと。手すりのない点は少々不安だけれど、理解のある、親切・ていねいなインストラクターさんばかりだし、自分も何とかなっているし…と手すりのことは半ば諦めていた私。その最中にこのような話だけでもしていただけたというのは、喜びもひとしお。私はこの話を伺ったとき、自分がいるあいだに間に合うかどうかよりも、このような気遣い自体がうれしく、『今後、私と同じようなかたちで訓練を受けに来た人たちのために』という観点からお話ししましたし、それは北野さんたちも同じような思いを持っておられるんだなと感じました。

「狩谷さんがいるあいだには間に合わないかもしれない。」と言っていた北野さんですが、結論から言うと、きちんと手すりはつけられてありました。その話から数日後のある日。私はいつものようにトイレに行こうとすると、「トイレ、手すりついたから見てみて」と北野さん。「まだ一週間も経ってないのに、できていたら速すぎる」微かな期待を持ちつつトイレのドアを開けると、真新しい手すりが静かに私を待ってくれていました。

そしてトイレから戻った後北野さんに「トイレ、本当に手すりついてましたね。ありがとうございます!」と言ったのを今でも覚えています。

この短い数日の間にビルのオーナーさんとも交渉していただき、迅速な対応をしてくれていたのです。これはインタビューさせていただきたい!そう思った私は、さっそく訓練終了後、日取りをして北野さんに詳しくお話を聞かせていただきました。ここからはその対談の様子を掲載します。

 

 

 

 

 

 

 

する方も、される方も知識や慣れだけでなくどれだけ優しい気もちを持てるかが大切

狩谷
狩谷
その節は大変お世話になりました。パソコンの基本操作から文章作成、表計算。インターネットやメールと多岐にわたってていねいにご指導いただき感謝しています。
北野
北野
みなさん結構パソコンになれている方が多かったこともあり、大変スムーズに進めさせてもらうことができました。
狩谷
狩谷
普段は一般の方を対象にした教室で、障がい者だけの講義は今回が初めてということで、やりづらかった部分もなかったですか?
北野
北野
障がい者の方という特別なことは全くなく、普段と同じようにご指導させていただきました。
狩谷
狩谷
車いすは私だけだったのですが、いわば私だけのために迅速に対応していただいたことに本当に感謝いたします。ご迷惑をかけたほかの方には申し訳なかったけど、手すりがなかったら約3ヶ月、本当にうまくやれていたか今思っても自信がありませんでした。
北野
北野
狩谷さんが下見に来られて苦労しているのを見て、手すりがあった方がいいのかなぁと思い、ビルのオーナーに相談したところ快く承諾していただけました。
狩谷
狩谷
介護に携わっている人ならまだしも、普段障がい者に接する機会が少ない方なのに、私が戸惑っているのを感じて、気遣っていただけたことが本当にうれしかった。
北野
北野
よかったです。大きな改修はできないけど、転倒することがないように手すりだけでも との思いで取り付けていただきました。お役に立てたのなら、関われた甲斐がありました。
狩谷
狩谷
私事ですが四年ほど前に、色々と勉強不足で準備も足りず、ほとんど何もしないで大学に通うことになり、配慮の行き届いていないトイレで大失態をしてしまいました。以来、知り合いのいない場所や使いなれないトイレがトラウマで…。
今回も正直講義の内容より、このことの方が心配でした。
北野
北野
障がい者の方といっても状態は人それぞれ。その人に何をさせてもらったらお役に立てるのかわからないから、二の足を踏むのですよね。
狩谷
狩谷
私もこの立場で感じることは、お世話をしてくれる人の気持ちが、その人の発する言葉や添えてくれる手から伝わるということですね。
お世話をする方も、される方も大切なのは、知識や慣れだけでなくどれだけ関心を持って観察し、優しい気もちで接することができるかだと思うのです。

 

北野
北野
今回が初めてのことだったので、皆さんにとにかく楽しんで学んでいただけたらとの一心で毎日、講義を進めさせていただきました。
狩谷
狩谷
それは十分伝わりました。6人ともスキルはまちまち。置いてけぼりの人を出さないように進めていくには、学ぶ側の意欲も不可欠です。それだけではなく、指導する側との信頼関係がなくてはうまくいかなかったとおもいます。
今回の成功は、指導に当たって下さったインストラクター方の思いがみんなに伝わった結果だと思います。

御坊では初めての開催。最後に今後の抱負や意気込みを

狩谷
狩谷
これまで和歌山や田辺エリアでは開講していたようですが、御坊は参加者が集まらず、今回が初めてだそう。もちろん、障がい者を対象にというのもこのエリアの管轄では初めてということになります。でも、近隣でもっと学びたい!と思っている人は少なからずいると思います。
北野
北野
今後、同じような需要と事業の委託があれば、この経験を活かして来年度も開講できると思います。
狩谷
狩谷
パソコンだけに限らずですが、私たちのような障がい者が何かを学びたい!と思っても受講し終えるまでには、物心両面に様々な壁があり、一歩踏み出す勇気がいる方が多いと思います。北野さんのような気遣いができる方がいらっしゃるところなら、胸を張って参加を勧められます。ぜひ、来年度も開講できることを期待します。
本日はありがとうございました。