インタビュー

『がんばれ、キラメキびと』 第8回 対談者 細田 幸平さん

シリーズでお送りしている、狩谷亮裕さんのインタビュー企画。
『がんばれ、キラメキびと』
前向きに取り組む仲間の活動を紹介することで、一人でも多くの人たちを勇気づけられ
たらとの願いから始まった。

インタビュー8回目は、細田幸平 さんとの対談を紹介する。

今回インタビューさせていただいたのは、有限会社樽の味で通販事業部長を務められている、細田幸平さん。自身の店のWebサイトでは後述するように食や健康、環境などについて紹介されている。細田さんの名刺には「昔ながらの製法で 時代遅れの漬物を」と書かれている。「時代遅れ」を敢えてウリにしているが、過去にはWebデザイナーとして働いていた職歴も持つ細田さん。社内のDX化にも力を入れたいとも話しており、そんな彼だからこそ感じる、今・これからの時代に必要な、仕事に対する熱意や障がい者雇用。障がい者が働くということについてその一貫した考えを熱く語ってくれました。

 

障がい者雇用の理由

狩谷
狩谷
今日は、よろしくお願いします。
まず、貴社でも例の少ない、障がい者雇用枠を使って障がいのある方を雇おうと思った理由をお聞かせください。
細田
細田
企業としての本音を言わせてもらえば、障がいのある方を雇用すると補助金が出る。やはり、これは大きいです。
もう一つの理由としては、障がい者の人を親身になって支援してくれる、理解のある人が会社の中に一定数いたというのもあります。

そして今回の事前質問にあった佐藤さん(仮名)。彼についてはイラストのスキルが高く、筆のタッチや色使い、陰影などに専門学校以上のスキルがある ということは一目で分かりました。

細田
細田
しかし、うちは発酵食品の製造や梱包作業。たまに出荷もありますが、製造業がメインなので、イラストの仕事ばかりでは無理だということを面接時にお伝えしました。
こうしたメインの仕事の合間でイラストやロゴの制作の必要が出てきたら、それは優先的に彼に回すと。この条件でお互いに合意できたので。それで今に至ります。
狩谷
狩谷
細田さんご自身もイラストのスキルがおありだったのですか?
細田
細田
自分で言うのも恥ずかしいですが、高校の時に美術を選択し、先生からも、お前は才能があると認めてもらっていました。
その後は、美術の道は歩まなかったのですが、名古屋の方でWebデザイナーとして5年くらい仕事をしていました。

なので仕事上、その人がプロかアマチュアか素人なのか。イラストやデザインを見る目は培われていると思っています。

狩谷
狩谷
そうだったのですね。
佐藤さんには今後、どのようなことを期待されていますか?
細田
細田
そうですね…。彼はもともとから真面目なので。変わらず、これまで通りの姿勢で仕事に取り組んでもらえればと思います。
これは後々に ということになりますが、ここで働いている中で彼の才能が認められ、知れ渡ってイラスト関連の仕事が増えてきて、彼のさらなるスキルアップにつながればいいなと思っています。

障がいを持っていても、気が付く・普通に働ける

狩谷
狩谷
そうですね。
次の質問に移ります。今までお話しされているのをお聞きして細田さんは、いわゆる就労事業所や介護事業関係でもない一般の企業の方です。そんな介護や障がいなどに偏見のない方から見て、今の障がい者雇用のしくみや、”障がい者がはたらく”ということについて。どう感じるのか?これをぜひお聞きしたいです。
細田
細田
実際に働いてもらって、僕が思ったことは障がいを持っていても、気が付く・普通に働ける ということです。

弊社には、障がい者ではないのですが、コミュケーション力にとても自信がないという方で、鈴木さん(仮名)という方もいるのですが、この方は樽の味のDX化※1 に大きく貢献してくれています。

鈴木さんのおかげでネット販売ができていると言っても過言ではない。

※1DX化

企業がビッグデータ等のデータとデジタル技術を活用して、業務プロセスの改善を促し、製品やサービス、ビジネスモデルといった、企業文化・風土全般を変えていくこと。より簡単に言うと、会社全体をアナログ→デジタルに変えていこう!という取り組みやその姿勢

狩谷
狩谷
その話も聞かせていただいていいですか?
細田
細田
鈴木さんを最初に面接したときのこと。面接時にお聞きすると、鈴木さんは、「ここで8社目です」と答えてくれました。
つまり、ここに来る前に7社面接に落ちたということです。

最初は、声が小さくて何を言っているのかが分かりづらく、本人も人と話したり、コミュニケーションを取るのが苦手なのは自身も理解しているということだったので、「確かにこの会話力では面接で落とされるのは無理もないかもしれない」。僕もその時は面接で正直、これはダメかも、と考えていました。

しかし、彼の履歴書や職歴書に目を通してみると、『Excelやaccess等、ちょっとしたプログラミング要素を含む仕事の実績がある。』と書いていたので、これはと思い採用してみたんです。 

細田
細田
それで試しに、この店の商品の販売数から過去最高の売上やリピート率とかって割り出せる?って言ったら、2時間ぐらいして「できました 」ときちんとしたものを出してくる。普通の人だったら、丸1、2日かけてやっと出せるか出せないかというレベルのものを、自動で売り上げを計算してくれるマクロなんかも取り入れているんです。
細田
細田
最初の方こそ、「細田さん。何で彼を雇ったの?」とか、この判断をした僕を「細田さんは間違った」とか言って、鈴木さんを悪く見ている人もいましたが、その度に、まぁ、もうちょっと見てて。僕の目に狂いはないはずと言ってみんなの懐疑的な意見をはねのけました。

そうして次第に業績が伸びだし、通信販売も軌道に乗り出して”彼の仕事の功績や結果が見えてくる”と彼に対する非難やそれらの雰囲気はなくなっていきました。

狩谷
狩谷
鈴木さんが来てくれて、よかったですね。ところで、細田さんは前職Webデザイナーとして務められていたのに、どうして今の会社を継ごうと思ったのですか?
細田
細田
人間関係のこじれでした。ちょうど僕の母親が、こっちに帰ってきたら?と勧めてくれたこともあり、会社を継ごうと決めました。
自分が苦しんだ分、人間関係で悩む社員をなくしていこう!と強く思いました。
狩谷
狩谷
人間関係は、どこでも大変ですもんね。
細田
細田
一番の基本で良いに越したことはない と分かってはいても、とても力がいることです。
大変だからといって、それに対して何かする会社と、何もしない会社があります。僕は前者でありたいと感じています。

雇用する側にも”見抜く力”は必要
~これからの時代は”職”へのこだわり、自分磨きが大切~

狩谷
狩谷
なるほど。脱線してすみません。話を戻しますね。
先ほどの鈴木さんの面接のエピソードを聞いていて、個人的に『職歴書』※2 というのが印象に残りました。面接等に備えて履歴書の欄は考えて書きますが、職歴書 というのはあまり聞きなじみがない言葉だなと。
細田
細田
そうですよね。僕も前職を辞めてこちらに戻ってきた時に、「え?そうなの!?」ってとてもびっくりしました。
前までいた名古屋では、面接の時に『職歴書』の欄まで書くのは当たり前で、むしろその欄に何も書かずに面接にいったら、シートを見た瞬間に、何しに来たの?って感じで不採用という流れが当たり前。

『職歴書』の欄に書いてあることがあればあるほど、自分にはこんなスキルがあります。こんなことができます。是非雇ってください! というアピールポイントに代わるんですよね。だから面接をする人も、『職歴書』の欄は要チェックで必ず見られる。

※2履歴書と職歴書の違い
履歴書 -「略歴」を定型フォーマット1枚で伝える-
氏名や連絡先、年齢、学歴や職歴など基本的なプロフィールなど
職務経歴書 -「何ができるのか」をA4サイズ1~2枚で伝える-
これまでの業務経験や、入社後に仕事で活かせる知識・スキルなど
引用:履歴書と職務経歴書の違いとは?

狩谷
狩谷
この辺りでは、逆に≒転職歴のように見られて、この人、こんなにも会社辞めてるのか うちで雇っても続かないなと思われてマイナスに取られ、不採用になる という流れが多いと思いがちの人がほとんどではないですか。
細田
細田
そうなんですよ。僕もこちらへ帰ってきて、職を探すのに職歴書はいらないと言われ、文化圏が変わるとこんなにも違うのかとカルチャーショックになりました。

自分のできることを提示することで、相手にも伝わりやすくなる。頑張ったら、その分評価につながり、活躍できる道が開ける。

細田
細田
先ほどの”障がい者がはたらく”ということについて。どう感じるのか?の答えになっているかは分かりませんが、自分のことをよく考え・理解しその上で、自分に合ったスキルを身につけられると、障がい者である ということをあまり気にしなくてもよくなるのではないかな?

たとえ障がいを持っていたとしても、あるスキルさえ身につけていれば、その分野では評価は平等か、あるいはその人の方が上に見られるかもしれない。

先ほど例に出した鈴木さんなどもそうですよね。社内でも彼のスキルの高さに驚く人も多いし、これは本当に運が良かったとしか言いようがないですけど、彼が8社目にここを受けてくれてよかった。 彼の隠れた才能や価値を見出せた最初の面接官がぼくで良かったなと。

僕の前に1人でもそういう面接官がいれば、彼は8回も面接に来ることもなく、そちらで仕事をしていたでしょうね。鈴木さんのおかげで今の樽の味があると思うと、少しホッとします。

狩谷
狩谷
田舎では特に、鈴木さんのような埋もれた才能がある人材は、いない前提で話を進めることが多いですからね。
それが田舎で何か事をやっていく部分の難しさでもあるし、逆に可能性を秘めている部分でもあるんでしょうね。
細田
細田
これからは、田舎・都会にかかわらず、働く側の人が自分のスキルを磨くことは大事ですが、その人のスキルをどう自分の会社に活かせるか?相手のスキルや本来の可能性を見抜く力が雇う側にも必要になってくるのではないかと思います。
狩谷
狩谷
今日のインタビューで、私も少し希望が持てました。例えば、宝くじで高額当たったら何をする などの夢や理想論だけでなく、細田さんのような方がいらっしゃる会社であれば、努力を惜しまず頑張れば私のように障がいを持った人でも、きちんと認められて、対等に評価される可能性がある。それがまた、頑張るエネルギーの元になる。

現実的な夢のあるお話しを聞かせていただき、今後の様々な活動への活力をいただけた気がしています。今日はありがとうございました。

樽の味の”食”に対するこだわり

狩谷
狩谷
最後に、樽の味のおすすめやこだわりについて教えてください。
細田
細田
こだわりは、商品の作り方や材料にあります。
樽の味では、発酵食品に並々ならないこだわりを持っていて、例えば、主力商品である「沢庵」。和歌山県産はもちろん、山形県産などの産地にこだわって選び抜いた国産の大根を使用しています。

また、塩や糠(ぬか)、唐辛子などの調味料も、大根やその他の食材が持つ本来の味わいを引き立てることになるため、こだわり抜きました。現社長である、私の父細田幸治は、最高の沢庵をこしらえるため、3年もの月日をかけて今の形を探し出しました。

細田
細田
何より、食べて頂いたお客様が美味しいと感じて頂けること。そしてお客様に健康で長生きしてくださることです。
どんなに美味しくても健康的でなくては、意味がない。そのためには、値段は多少高くなりますが、それでも「美味しく健康」な商品をお客様に提供し続けることこそが食品会社の本来の姿であると同時に、我が社「樽の味」最大のこだわりであると思っています。
狩谷
狩谷
これからも、親子。そして社員のみなさんの益々のご活躍を期待しています。
本日は、どうもありがとうございました。
細田
細田
ありがとうございました。
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